2020.2.14  9:14

「春?じゃない…はず」

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2月半ばというのに、昨日の最高気温はプラス9℃!


道路の雪は溶けてベチャベチャ路面。水たまりも多数。
昨日は出張仕事で札幌へ行っていたのですが、道路には雪はなくて快適ドライブ。
ホント、春みたいです。


こんなに雪が少ないと、一般的には
「フクジュソウやカタクリなどの春植物は早く咲くだろうし、いいね~」
なんてこともよく聞きます。
確かに雪解けが早く晴天率が上がってくれば花の開花も早まるのでしょうが、そんな単純な話しだけではないかもしれません。


雪は悪者イメージで語られることが多いのですが、実は雪の恩恵というものもあります。


数十年前に北海道で行われた実験で、常に除雪することでシーズンを通して積雪量を人為的に調整し、積雪量と土壌凍結の関係を調べた研究があります。


それによると―、
シーズンのあいだじゅう15センチに調整された積雪下では、1月中旬には土壌凍結が10センチほどの深さまで達したものの、それ以降の凍結は進まなかった。
さらに積雪量を30センチにすると、シーズン初期に地下数センチが凍結しただけであとは凍結は進まず、しかも2月末までには融解が始まったそうです。


では積雪が0センチの状態ではどうか、というと―、
12月初めから土壌凍結が始まって時間の経過とともに凍結は深くなり、3月上旬に凍結深度はピークを迎えてそれは50センチにも及んだ。
しかもそれが完全に融解するまでには、4月下旬近くまでかかったそうです。


まさに、雪の布団で土壌は守られているわけです。


ニセコみたいな場所では、少ないと言っても1mは常に超えているので土壌凍結という側面での影響はないかと思いますが、通常の積雪量が数十センチ程度の地域では今年はほぼゼロ。
だけども、それなりに寒気が流入する日はあります。


となれば、雪に守られていない土壌は、例年以上に凍結深度が増したり凍結・融解を繰り返していたり……。


こんな冬を生き延びた個体は、少ない残雪の中で暖かな日差しによって早い時期に開花するかもしれませんが、実は人間の気づかない所(地中)で死んでいる埋土種子や越冬個体がいつも以上にたくさんいて、群落としての個体数は減る、なんて可能性はないのかな?
と、個人的に興味深く思っています。


さらには、「雪代(ゆきしろ)」と呼ばれる雪解け水は、数ヶ月の時間をかけて山から山麓へ水を供給し、川の水量を増やして川を洗うとともに、田畑を潤し、農業を支えています。
数日の間で水量が増減するような降雨による増水とは、水の動きが違います。
となれば、農業や河川環境への影響が6月以降に出たりしないのかな?とか…。


あくまでワタシが個人的に思っている想像の話しですが、前例が少ない分、「どういう影響があるのか?」という部分が、コトの善悪を語る以前に興味深いのです。


そして昨日の札幌では……、


そもそも、この「いつもと違う」ということに着目して自然のイレギュラーさを語るためには、過去を ”科学的な数値で” 語れないといけません。
つまり、同じ場所で同じように何年も見続けることで論拠となる知見を積み重ね、今年と比べる必要があります。


『そんな基礎データの蓄積って、ムズカシイよね~。10年・20年レベルじゃないと数字の信頼性も出ないし。しかも、超地味な活動だし(笑)』
『だけどこんなイレギュラーな年にこそ、そんな基礎データを持っているかいないか、の差が出るよね~。ナチュラリストたるもの、そうありたいよね~。でもやっぱり地味だよね~(笑)』
なんて話しで盛り上がってました。


経験則的・短絡的な ”良いとか悪いとかの話し” に終始するわけでなく、啓蒙的な ”こうすべきとか、こうあるべきとかの話し” をするわけでもなく、あくまでまずは自身がどう自然をみて、どう疑問を持ち、判断し、人が納得出来る材料を用意した上で伝える、という仲間との会話に、ある種の心地よさを覚えました。


さすがにこのまま春ってことはないだろうけど、どうなることやら。


(雪の少ない、今の倶知安駅)
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