2020.10.30 16:39

「管理と維持の実状とこれからのひとつのカタチ」

本州の自然遊歩道って、高標高の道でなければ笹薮だらけで歩けないなんてことは少なく、すっきりとした林床であることが多いです。
当然例外もありますが、ざっくりとは地形の起因や植生に由来するものかな、と思っています。


本州の遊歩道はすっきりした見た目(が多い)。
170609-15.11.56_0001.jpg


低標高の急傾斜地では、ササで繁茂するよりも低木や稚樹が繁茂しています。
171022-12.10.55_0001.jpg


一方、北海道(特に日本海側)の森では、林床は一面がササになる場合がほとんどです。
特にニセコのような多雪地帯は、背丈を超えるようなササ(チシマザサ)が密に生い茂っています。

(ニセコ神仙沼のチシマザサ)
201009-11.10.22_0001.jpg


(標高を下げてもコレ)
180527-12.52.14_0001.jpg


羊蹄山麓に半月湖という遊歩道があるのですが、ここは春の鳥観察から秋の紅葉まで、誰でも気軽に歩ける身近な自然遊歩道です。
ニセコではそんな遊歩道も、笹刈りをやらなければどんどんササに覆われ、いつしか歩けなくなっていきます。
この道もここ数年は一部の道しか歩くことが出来ず、奥まで行こうと思うと笹薮をかき分けながら歩く状態になっていました。


そこを先日の10月末、私も所属しているニセコ羊蹄山岳会の活動の一環として草刈りを実施しました。
(当日私自身は参加出来ず、ガイド仲間たちが頑張ってくれました。ありがとう)
国立公園で、かつ天然記念物でもあるエリアなので、許可関連は公の倶知安観光協会にお願いし、実働部隊として地元ガイドからなる山岳会で行う、という活動。
ガイド同士でも何年も前から、「もう、オレらがやっちゃいたいよねー」などと話していた計画がやっと実現しました。


遊歩道の管理にはお金と労力がかかる上に継続的に行うことが必要で、ましてや許可申請が必要なエリアとなると現実的にはやり続けることが難しい問題です。ほとんど役所頼み。
自然散策って、地域住民大多数の幸福・利益に直接繋がるわけではないし、地元にお金が落ちることもほぼないので、各地の自然遊歩道の維持管理なんてことは後回しになるのが実状です。
知床や奥入瀬や上高地のような一大自然景勝地として観光地化している場所は、そもそもの自然の姿が誰の目にも抜きん出ているからこそ観光地として成立するわけで、そんな場所であれば ”道” 自体はとりあえず維持されます(それはそれで保全と利用のバランスを初めとした様々な問題がありますが)。
しかし北海道の地方の小さな自然遊歩道は廃れていく一方で、遊歩道の存在自体が危ういような場所ばかり、といってもいいかもしれません。
誤解のないよう言っておくと、一方的な管理側の問題だけではなく、ヒグマの出没などの安全管理上の問題で歩けなくなり、結果的に廃れていく道も北海道には多くあります。
まぁこれも、「ヒグマが出たから閉鎖→誰も歩かない→歩けないから維持管理をしない→ヒグマの出没頻度がより多くなる」というスパイラルから抜け出せていない気もしますが…。


全道の大小様々な自然遊歩道をツアーフィールドにしている私としても、自然遊歩道の荒廃はツアーの難しさが増すばかりでなく、気持ち的にもとても残念な問題です。


『どうせキチンと管理したって、歩く人なんていないだろう。そんなことにお金と労力をかけるより先に……』
という話しも良く聞かれますが、ワタシからすると、
『管理しないで快適に歩けない道だから、歩く人がいない』んです。
まぁ、確かにそんなふうに利用してくれる人が地域観光を支えるほどたくさんいるか、と言われるとそこまではいないと思いますが、地元の自然を愛している人による管理が行き届いている、というのは、歩いていても気持ちがいいものです。
自然が好きで日常的に歩いているような人は間違いなく喜んでくれます。そんな感性の人がその地域の本当のファンになってくれるのでしょう。


なので、日常的に自然の中を歩き回っていて、自然を科学的にも見ることが出来る私ら山岳会(ガイド)のような連中が、地元と連携して実働部隊として動く仕組みが大切です。
多くの植物が枯れたこの時期に、キチンと足元の植物にも気を配りながら実施することが出来る人間が維持管理をすることで、足元の草花や稚樹にもインパクトが少なく済み、管理のチカラ加減(過去ブログ「遊歩道のあり方を考える」)もいいふうに出来るんじゃないかと思います。


そして緑の季節になれば、その面々がその道を使って地元の自然調査を実施して ”今の自然の姿” を記録していけばなおよし、ですね。
キレイ・カワイイ・スキといった感性で自然を見るのはとってもいいことですが、そんな部分はその感性を共有出来ない人には理解されません。なので、科学的・数字的にも自然が見れないと保全は出来ないのです。今現在の自然を語れずに保全は成立しませんから。
そんなで今年は、鳥調査が6回、植物調査が2回、草刈りによる維持管理が2日間、と地元の活動として行えました。しかも周囲の理解も進み、一部は有償で活動出来ています。


『誰でもいつでも気軽に歩けて、そこの自然環境が健全に維持されている』


そんな簡単なバランスの維持が意外とムズカシイものなんです。


私が自然ガイドを始めた20年ほど前、目上の先輩から
「ニセコはラフティングやカヌー、山やスキーなどのアクティビティツアーはA級だけど、自然ツアーと自然ガイドはまだまだで、君なんぞまったく自然が見れていない」
なんてことを言われたことがあります。当時の私は知識も技術も経験もないし、今みたいなガイド仲間もさほどいるわけでもなく、そのとおり。自然ガイドと名乗っていても、感性で自然を楽しんでいただけです。
何も言い返せずに悔しい思いをしたもんです。


個人的な思いですが、登山やスキーだけでなく、山麓の自然の維持・管理・利用についても一歩も二歩も進んだ地域になって、そこに地元ガイドが関わっていける仕組みが出来れば少しは前進したように思えます。
ニセコ地域全体に活動が広がっていくといいですね。


(↓ツルリンドウが巻き付いたササだけ刈られていませんでした。ニクい!)
201030-14.54.10_0001.jpg


(↓小さな子どもでもおばあちゃんでも歩けるようになりました)
201030-14.55.25_0001.jpg

●コメント一覧

半月湖遊歩道の整備が出来てよかったですね。
歩くのが楽しみです!
時には散歩にもトレッキングシューズで劣化対策しています(笑)

ナンジョウ 11. 2 16:46

そうですね。
「誰でも歩ける場所が維持されている」というのは、簡単なようで意外と難しく、どの道でも誰かのおかげなんですよね。改めてそう感じます。
鳥の季節にでも、ぜひご一緒したいですね。
それまでは劣化対策に励んで下さい(笑)

Ftre-zen 11. 2 17:18
●コメントを投稿

投稿ボタンを押してから、投稿完了までしばらく時間がかかります。
投稿完了後、管理者が承認するまではコメントは表示されません。






自然のおはなし
「管理と維持の実状とこれからのひとつのカタチ」
「クズあれこれ」
「キビタキのディスプレイ」
「器用なカケス」
「春?じゃない…はず」
「ゲジゲジシダ顛末記」
「さっぽろ野鳥観察手帖」
「遊歩道のあり方を考える」
「エゾエンゴサク」
「植物から学ぶ」
「“ハマる” 難しさ」
「バイケイソウあれこれ」
「登れない山」
「いつまでたっても」
「巨鳥」
「スギラン」
「ハルニレ林」
「オカダモ」
「キオンとヒトツバハンゴンソウ」
「比べるシリーズ」
「ヒルナンデス」
「嬉しい出来事」
「盛りだくさん」
「ヤブキ用語」
「アライグマ」
「フクジュソウとシャク」
「クマゲラ」
「サクラソウ色々」
「図鑑ネットサービス」
「クマにご注意」
「蚊と色の関係」
「キバナコウリンタンポポ」
「マキノスミレ in北海道」
「水恋鳥」
「カタクリ~実生」
「古道をゆく」
「雪の中の紫外線にご注意!」
「コクマルガラス~声など」
「コクマルガラス」
「カワガラス」
「図鑑のための図鑑」
「ハクチョウとキツネ」
「ニセコのオジロワシ」
「しだまとめ」
「はなまとめ~2」
「はなまとめ~1」
「とりまとめ」
「顔パスで」
「シダ見」
「耳かき草」
「早春の鳥見」
「古道」
「Ftre掲示板開設」
「コガラとハシブトガラ その2」
「コガラとハシブトガラ」
「今年を振り返る~植物編」
「今年を振り返る~動物編」
「黄釣舟」
「サイシンあれこれ」
「黄から紫へ」
「夏の自由研究?」
「予習もおススメ」
「続・ ? 」
「雪の降る夜は・・・」
「虎落笛」
「秋の声」
「ハズカシながら・・・」
「宵待草」
「朴の花」
「魑魅魍魎(ちみもうりょう)の森」
「鳥・撮り」
「道標(みちしるべ)」
「雁風呂」
「雪虫」
「シジュウカラとゴジュウカラ」
「春の声」
「かくありたい」
「写真集2(失敗編)」
「そらとくも」
バックナンバー
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年