2014.9. 4 18:20

「黄釣舟」

たまには自然ガイドらしくいきますよー!


P8310002.jpg

今年も森の中で黄色い舟がぶら下がってます。その名もキツリフネ。


夏の間、沢辺などの湿った土地に生育する植物で、日本全国に分布しています。
“紫の舟”のツリフネソウの黄色バージョンですが、キツリフネは山地でより多く見られるようです。
(↓ツリフネソウ)
P8310015.jpg


帆掛け舟のような花姿からツリフネソウ・・・と、よく言われますが、
茶道で使われる舟型の花入れ(=花器)から、ともあります。
※花器→参考HP
ワタシ的には、こちらの方が納得です。


晩夏から初秋にかけて、しっとりと濡れたこの花を見ると、
「夏も終わりだな~」
と感慨深く感じる風景でもあります。


このキツリフネ、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の植物で、学名では Impatiens noli-tangere と表記されます。
ちなみに、
「なんて読むの?」
なんて質問はナシ!とりあえず英語読みしちゃって下さい(正確には違うようですが)。
学名はラテン語で表記されますが、ワタクシ、ラテン語は分かりません。
と言っても、「英語なら分かるのか!」っちゅうツッコミもお断り。
英語はカタコト、日本語すら何言っているか分からん時があるくらいなので・・・。


話しを戻しましょうね。


最初の “Impatiens” は、分類上の「属」を表し、ツリフネソウ属のこと。ホウセンカの仲間たちと言ったほうが分かり易いでしょうか。
次に来る “noli-tangere” は「種小名」と呼ばれるもので、その植物独自の呼び名が与えられています。
基本的には、この「属名」と「種小名」を組み合わせて表記したものが学名であり、「種(しゅ:species)」となります。


現在の分類の方法や学名の命名法は、300年ほど前にスウェーデンの分類学者リンネ(Carl von Linne 1707-1778)が築きました。
地球上のあらゆる生物には、このリンネ式二名法が使われています。ちなみに人間の学名は、Homo sapiens(ホモ・サピエンス)。


リンネの分類は、まず植物から始められました。それぞれの植物を分類(グループ分け)し、ひとつひとつに学名をつけていくわけです。


当時は、リンネが命名した学名があまりに性的イメージを彷彿させ、多くの非難をあびたとか。
これは、リンネが「花」という生殖器官(おしべ・めしべ)に注目して分類をしたことにも由来するようです。


ところで、さきのキツリフネの学名はまさにリンネが命名しています。
各単語の意味は、というと・・・
キツリフネの属名 “Impatiens” は、「こらえきれない・我慢できない」という意味。
そして、種小名の“noli-tangere” の意味は、「私に触らないで」。
ツリフネソウの英名(英語名)は、まさに “Touch-me-not” です。
ちょっと色艶っぽい感じがしません?


成熟した実は、少し触っただけでパチンと音をたてて弾け、タネを放出します。
初めて見る人はきっと驚くことでしょう。
子供たちは喜んで遊びそうですね。


↓これにそっと触ると・・・
P8310005.jpg
↓弾ける!
P8310011.jpg


キツリフネの花期が終盤となり、実をつけたキツリフネを見かけるようになりました。
キツリフネの実が弾ける仕組みは、種子をより遠くに飛ばすための戦略。
だけど、「私に触らないで」とは、なんとまぁ裏腹で色っぽいこと。


キツリフネの実をを見かけたら、まずはそぉ~っと手を伸ばしましょう。
種子散布の手伝いになりますので、「触らないで」と言ってもきっと喜んでいるはずです。
こらえきれないかのように、パチンと弾けて勢いよくタネを飛ばしますから。


P8310017.jpg

●コメント一覧

写真がきれいですね。よく見ていますが今回の、私には大変おもしろかったです。たまにお願いします。

藤田豊 9. 5 12:00

>豊さん
いつも拙いブログにお付き合い頂きありがとうございます。
たまにマジメに(?)、ガイドらしく書きますので、気長にお付き合いくださいマセ。

Ftre-zen 9. 5 23:21
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