2017.3.28 15:33

「フクジュソウとシャク」

先日、こんなのを見つけて「ほぉぉー、こりゃ面白い!」とひとり喜んでました↓。
2017-03-26%2011.33.26_038.JPG

「フクジュソウって、花が咲いてすぐに、こんなに葉を開く個体もいるんだ~へぇ~。」
と思った後に、
「いやいやいや……。」
騙されそうになりました。


上の写真は、シャクの葉の中でフクジュソウの花が咲いている状態で、両種が混在しています。
葉の展開具合によっては、このふたつは間違えやすいので、要注意ですよ。


というのは、シャクは俗にコジャクと言って山菜として食べられます。
フクジュソウは猛毒です……。


食べてみれば確実に見分けられますが、しばらくすると口内が痺れてきて、呼吸麻痺・腹痛・嘔吐・痙攣、ひどい時には死……という、悪質な連続攻撃。
まったくもっておススメしません。


フクジュソウは、前年の秋に蕾を地中に作って越冬、翌春一番に蕾を地上に出します。
なので、開花してすぐではまだ葉が開いていません。
前年分に溜め込んだエネルギーだけで、開花させているわけですね。
2016-03-23%2012.25.54_042.jpg


開花後しばらく経って、やっと葉が展開しはじめます。
170425hukujusou.jpg


一方、シャクは初夏の花。
だけど芽吹きはかなり早く、フクジュソウの時期に地上に出てきます。当然蕾はまだありません。
早春の明るい森の中でいち早く葉を出してエネルギーを生産し、開花に向かいます。
このシャクの芽吹き直後が、フクジュソウの葉を思わせます。
(↓シャクの芽吹き)
2017-03-26%2011.17.02_019.JPG


この近くに、花を付けていないフクジュソウがあったら・・・
(↓花茎を付けていないフクジュソウの芽吹き)
2017-03-26%2011.33.48_040.JPG


一見、よく似てますね。
周りにシャクがあれば “シャク” と言い、フクジュソウがあれば “フクジュソウ” と言って、決めつけちゃいそう。


じゃ、違いは?といえば、シャクはセリ科植物なので葉をちぎるとセリ独特の匂いがするのが一番の特徴(フクジュソウは無臭)。
また、シャクの葉の根元には茎を抱くような “はかま” があります↓。
2017-03-26%2011.18.32_021.JPG


シャクの葉裏には微細な毛があることが多いですが、これは次第に脱落するようで、毛のずいぶんと薄い個体もいます(フクジュソウは無毛)。
2017-03-25%2013.06.34_032.JPG


さらに、シャクは株状に生えるので面的に広がるけれど、フクジュソウは(面的に生えているように見えても)一本立ちで生えるので、茎の根元を見ると分かります。
あとは、フクジュソウの葉の方が白っぽくて鋭角な印象、シャクは赤っぽい傾向にあるように思いますが、これは個人的感覚なので参考程度に。


そして5月も半ばを過ぎれば、葉はすっかり大きくなります。
フクジュソウの葉は茎に流れるようシャープな見た目。
(フクジュソウ葉展開後↓)
2013-05-25%2010-28-11.JPG


こちらはシャク展開後↓。
P6140046.JPG
葉が展開してくれれば、葉だけを見てもこれらを見間違うことはないでしょう。
まぁ、ここまで大きくなったら食べる人はいないと思いますが。


実際に野外でこの二種が「似てるな」と思うのは、この、
『芽吹き直後で葉が開いていないシャク × 芽吹き直後の花茎を付けていないフクジュソウ』
が同時に見られるタイミングかと思います。


特に山菜好きな方は、ご注意を。

●コメント一覧

さすが全さんですね。私も今でも間違います。
シャクはもうすこし(見分けが出来るくらい)大きくなってから、とって食べることにしています。
全さんの写真もわかりやすいです。ありがとう。

ゆたか 3.28 19:21

いやいや、ワタシもかつて間違えましたので。。。
花を見て「フクジュソウね」って、そりゃ分かりますが、こんなふうにキチンと見ればまた、自然を見るムズカシさ・奥深さを感じますね。そこもまた楽しいトコロ。

Ftre-zen 3.28 22:17
●コメントを投稿

投稿ボタンを押してから、投稿完了までしばらく時間がかかります。
投稿完了後、管理者が承認するまではコメントは表示されません。






自然のおはなし
「新ツアー」
「管理と維持の実状とこれからのひとつのカタチ」
「クズあれこれ」
「キビタキのディスプレイ」
「器用なカケス」
「春?じゃない…はず」
「ゲジゲジシダ顛末記」
「さっぽろ野鳥観察手帖」
「遊歩道のあり方を考える」
「エゾエンゴサク」
「植物から学ぶ」
「“ハマる” 難しさ」
「バイケイソウあれこれ」
「登れない山」
「いつまでたっても」
「巨鳥」
「スギラン」
「ハルニレ林」
「オカダモ」
「キオンとヒトツバハンゴンソウ」
「比べるシリーズ」
「ヒルナンデス」
「嬉しい出来事」
「盛りだくさん」
「ヤブキ用語」
「アライグマ」
「フクジュソウとシャク」
「クマゲラ」
「サクラソウ色々」
「図鑑ネットサービス」
「クマにご注意」
「蚊と色の関係」
「キバナコウリンタンポポ」
「マキノスミレ in北海道」
「水恋鳥」
「カタクリ~実生」
「古道をゆく」
「雪の中の紫外線にご注意!」
「コクマルガラス~声など」
「コクマルガラス」
「カワガラス」
「図鑑のための図鑑」
「ハクチョウとキツネ」
「ニセコのオジロワシ」
「しだまとめ」
「はなまとめ~2」
「はなまとめ~1」
「とりまとめ」
「顔パスで」
「シダ見」
「耳かき草」
「早春の鳥見」
「古道」
「Ftre掲示板開設」
「コガラとハシブトガラ その2」
「コガラとハシブトガラ」
「今年を振り返る~植物編」
「今年を振り返る~動物編」
「黄釣舟」
「サイシンあれこれ」
「黄から紫へ」
「夏の自由研究?」
「予習もおススメ」
「続・ ? 」
「雪の降る夜は・・・」
「虎落笛」
「秋の声」
「ハズカシながら・・・」
「宵待草」
「朴の花」
「魑魅魍魎(ちみもうりょう)の森」
「鳥・撮り」
「道標(みちしるべ)」
「雁風呂」
「雪虫」
「シジュウカラとゴジュウカラ」
「春の声」
「かくありたい」
「写真集2(失敗編)」
「そらとくも」
バックナンバー
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年